商品を売るのではなく、ストーリーを伝えるFC今治グッズ ♯FC今治、今治.夢スポーツが取り組むSDGs
見出し画像

商品を売るのではなく、ストーリーを伝えるFC今治グッズ ♯FC今治、今治.夢スポーツが取り組むSDGs

2021シーズンからサステナブルなグッズの取り扱いをはじめたFC今治。11月7日のホーム戦では、SDGsゴール14「海の豊かさを守ろう」の実現に向けたひとつの提案として、海洋プラスチックごみをリサイクルして製品化した『Leafトレイ(平市島産)』を販売します。材料の海洋ごみは、しまなみ野外学校の「無人島ごみ拾いプロジェクト」で子どもたちが集めたもの。無人島ごみ拾いプロジェクトを企画した、しまなみ野外学校ディレクター・河﨑梨乃(かわさき りの)さんに、グッズ販売に至る経緯や製品に込めた想いを聞きました。

きっかけは海洋ごみから生まれた工芸品との出会いと、スタグルでの気づき

画像1

▲河﨑さん

――まずは、グッズ販売のきっかけとなった「無人島ごみ拾いプロジェクト」について教えてください。

JT SDGs貢献プロジェクトの助成をいただき、中学生以上の学生を対象に、9月25日から1泊2日で今治市にある無人島・平市島に行ってごみを拾い、集めたごみを資源としてコースターに作り変えるというプロジェクトでした。「ごみ」として捉えると捨てられてしまうものも、「資源」として捉えると、それは新たなモノを作り出す材料となります。そんな視点を糸口に、無人島という自然に囲まれた舞台で海洋プラスチックごみ問題を考えるきっかけをつくりたいと企画したものです。

画像11

コースターは、海洋プラスチックごみのアップサイクルを行っている株式会社テクノラボさんで製造いただき、参加した子どもたちに送りました。

――最初から海洋プラスチックごみ問題に着目して企画を考えていたのでしょうか?

最初はざっくり環境問題というキーワードで考えていました。この企画を考え始めたのは昨年なのですが、当時の私は入社したばかり。大学時代に森林資源学コースを専攻し、SDGsや環境教育に関心はあったものの、何から始めたらいいかわかりませんでした。その中で出会ったのが、テクノラボさんの海洋プラスチックごみをアップサイクルした工芸品「buøy(ブイ)」でした。ごみからこんなに綺麗なものができるんだと驚いて。それと同時に、テクノラボさんを知ったことで海洋ごみを真剣に考えたいと思うようになりました。

世界中で年間800万トン以上のプラスチックごみが海に流れ、海洋汚染や生態系に影響を与えています。ビーチクリーンだけじゃなくて、私たち一人ひとりが日々の生活の中で取り組んでいかないと、海洋ごみは減らない。テクノラボさんのbuøyとの出会いが、企画のひとつのきっかけです。

もうひとつのきっかけは、FC今治のホーム戦のスタグル(スタジアムグルメ)ブースにあります。屋台の食器って、食べてすぐごみになってしまうじゃないですか。お弁当もそうだし、ペットボトルもそう。今まで私もコンビニや自動販売機で飲食物を買っていましたが、ああいう大きいイベントになると、そのごみの量は膨大になります。すごく便利なモノとして生まれてきたのに、たった5分や10分で捨てられてしまうって悲しいなと思ったんです。

画像2

▲ホームゲームでのスタグルブースは大勢の人で賑わう

このふたつがきっかけとなり、「だったら、ごみから食器が作れるのでは?」と考えました。ゆくゆくは、里山スタジアムの食器をすべてごみ資源から作りたい。しかもリユース食器として何度も使えるようにしたい。じゃあそれを実現させるための第一歩となるプロジェクトを企画しよう。今治の海にごみとして流れて来たものが、子どもたちの手で拾われて、すてきな商品に生まれ変わって、今治の人の手元に帰ってくる。それが大切に使われて循環していくストーリーを描いたんです。そんなストーリーで「里山スタジアムの食器をすべてごみ資源から作る」という目標の第一歩としたのが、この「無人島ごみ拾いプロジェクト」でした。

製品を作ってストーリーと売れば、想いがもっと伝わると思った

――当初は、参加者にコースターを送るだけで販売予定はなかったとのことですが、そこからどのような経緯で今回のグッズ販売に至ったのでしょうか?

プロジェクトの最後に、FC今治のホーム試合会場で子どもたちが活動報告会をしたんです。私は自分の初企画プロジェクトに自信がなく、子どもたちがどう感じたか、しっかり話せるか心配でした。10分くらいで報告できたらいいなと思っていたのですが、子どもたちは倍の20分以上話し続けてくれたんです。たった1泊2日ですけど、このプロジェクトを通して子どもたちに伝わるものがあったんだと驚きました。それをスタジアムで聞いている大人たちも徐々に増えていったんです。通り過ぎるお客さんも多いだろうと思っていましたが、予想以上に大勢の人が足を止めて発表を聞いてくれて。子どもたちの声ってすごいなと思いました。

画像3

▲活動報告会の様子

その日、たまたま試合終了後に試験的にごみ拾いをしようという企画もあったんです。活動報告会のあとにその告知をしたら、100人以上のサポーターが集まってくれたんです。もしかしたら、こちらが思う以上に反響があるのかもしれない。子どもたちにコースターを届けて終わりじゃなくて、こうして今治に来てくれるサポーターに何かもっと伝えられる方法があるかもしれない。そう感じていたときに、マーケティンググループ(以下マーケ)のメンバーが私と同じような気持ちで製品に目をつけ、「販売してもいいんじゃない?」と声をかけてくれたんです。モノとしてもすてきなのはもちろん、「商品を売る」というよりも「ストーリーを伝える」という意味で、製品を作ってストーリーと一緒に売れば、想いがもっと伝わるかもしれない。そこから今回のグッズ販売が実現しました。

iOS の画像 (16)s

▲試合後のゴミ拾いイベントに多数の参加者が

マーケメンバーが声をかけてくれたときは、とにかくうれしかったです。単発のプロジェクトにはしたくなくて、もっと大勢の人の意識の中に届けられるようにしたいと考えていたので。FC今治のグッズとして販売されるなんて本当にうれしいですし、期待に応えたいと思っています。

製品の個性も子どもたちの想いも大切にしてほしい

画像5

▲Leafトレイ(平市島産)

――今回販売されるグッズについて詳しく教えてください。

子どもたちに送ったのはコースターでしたが、グッズ販売するにあたりマーケメンバーと相談して、より実用性の高いトレイを販売することにしました。buøyのleafシリーズの中の2種類で「クリップトレイ」と「ペントレイ」です。
子どもたちが平市島で拾った海洋ごみを洗浄して、色ごとに分けてテクノラボさんに送り、カラーは黄、青、白のチームカラーを意識した3色と、赤・黄・白の3色を使った製品を製造してもらいました。元は海洋ごみなので、直接人の手に触れないように、表面には薄いフィルムでコーティングが施されています。表面のフィルム以外は100パーセント子どもたちが拾ったごみなので、含まれる素材によって一つひとつ色や模様が異なり、葉っぱなども入っていると思います。そんな製品の個性も子どもたちの想いも大切にしていただきたいです。buøy製品のラベルには、ごみを拾った場所が「産地名」として入るんです。ですから今回は「今治市」と入ります。11月7日のホーム戦で限定30個を販売します。

――11月7日のグッズ販売に向けて工夫したことや考えていることはありますか?

どんなパッケージにするかなど、具体的な販売スタイルはまだこれからなのですが、販売ブースに並べるときは、無人島ごみ拾いプロジェクトの活動写真を展示するつもりです。子どもたち一人ひとりがこういう想いで参加して、こんなふうにごみを拾って、拾ったごみはこれぐらいで、そのごみがこんなグッズとして生まれ変わりました、とストーリーも一緒に届けられるといいなと思っています。

画像6

私たち自身の生活を変えるには、まず海洋ごみ問題を知る必要があります。このグッズがそのきっかけになってくれるとうれしいです。平市島での海洋ごみ拾いは、臭いし汚いしというのが正直な状況でした。でも、参加した高校生が「ごみ拾いってこんなに楽しんだ」と言ってくれたんです。一人ではつらいと思うことでも、仲間と一緒だと楽しくなって豊かになる。子どもたちが体験を通じて触れた心の豊かさも、今回のグッズと一緒に届けられたらと思います。

――どんな人に使ってほしいですか?

普段、よく目するところに置いて使ってほしいです。見るたびにストーリーを感じて温かい気持ちになる。大切にしたくなる。どんな人にというのは難しいですけど、そんなふうに大切に使ってくれる人に選んでいただきたいです。

iOS の画像 (21)

一度はごみだったとはいえ、「海洋ごみ問題を考えるきっかけにしてほしい」という想いからはじまっているものです。せっかく手にとってもらっても、またすぐに捨てられてしまうと悲しいですから。本当にいいなと思って、気に入ってもらえた人に買っていただきたいです。

当日私はきっと販売ブースに張り付いています(笑)。皆さんにどんな反応をしてもらえるのか楽しみです。

グッズをきっかけに、大勢の人と心でつながっていきたい

――今後の展開はどうなるのでしょうか?

今回のグッズは、子どもたちが拾ったごみからできる30個売り切りで継続の予定はまだありません。でも私としては、できれば継続して海洋ごみを考えるきっかけを提供し続けたいです。
先日七五三ヶ浦に行くと、ごみが全然ありませんでした。今治市内のいろいろなところでビーチクリーンが行われていますから、誰かが拾ってくれたんだと思います。子どもたちとごみ拾いイベントをするだけではなくて、そういう人たちと地域ぐるみで、今治市内の海洋ごみをリサイクル品に変える取り組みが継続的にできればと思っています。継続的にと言っても、ビーチクリーンするごみがなくなること、リサイクル品が作れなくなることこそが一番の理想です。

画像8

あと、「里山スタジアムの食器をすべてごみ資源からつくる」という目標に関して言えば、無人島ごみ拾いプロジェクトでつくったコースターで第一歩を踏み出し、トレイのグッズ販売へと前進しました。当初はこうした取組の延長上に、里山スタジアムができるころにはテクノラボさんのこのプロダクトで食器をつくるストーリーを描いていたのですが、このことは食品衛生の観点からきわめて難しいということが分かってきました。テクノラボさんのプロダクトは、もともとは汚かったり匂いがあったりする海洋プラごみも材料に含まれるので、洗浄や表面コーティング技術を施しているとはいえ、食べ物を入れることはまだできないと。

画像9

この事実に直面し、最初は「どうしよう」と思いました。挫折というと大げさですが、ストーリーの流れが途切れてしまうことに落ち込みました。でも今となっては、テクノラボさんでつくるこの製品はもちろん意味のあることなので、これはこれとして、食器は食器としてまた新しく考え直せばいいなと思えるようになりました。私なりに里山スタジアムの理想を考えると、いろいろなことができます。その中のひとつがリサイクル食器なだけで、ここだけにこだわる必要はないなと自分なりに消化できたんです。
むしろ、テクノラボさんで食器が作れないと最初から分かっていれば、FC今治のグッズとしてトレイを売ることはなかったかもしれません。テクノラボさん以外の、同じような想いを持った企業や団体と関わるチャンスを逃すことになるかもしれません。そう考えると、よかったとさえ思えたんです。実際、ペットボトルを集めて食器を作っている会社も見つけました。

私たちが地球環境のためにできることは、ゴールも手段も無数にあります。今はリサイクル食器に抵抗がある人もいるとは思いますが、里山スタジアムに来た人にはいつか「そういうのもいいね」と言ってもらえる。みんなに「里山スタジアムを地球環境に配慮した場所にしたい」と思ってもらえる。そんな活動をしていきたいです。

今治.夢スポーツは「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する」という企業理念を掲げています。今回販売するのはモノですが、単なるモノではなく、企業理念が体現されたモノだと思うんです。子どもたちや私の想いも、生き霊がついているんじゃないかと思うほどに心を込めたモノです。海洋ごみ問題や地球環境を考えるきっかけになりながら、大勢の人と心でつながっていけたらうれしいです。

取材・文/高橋陽子

画像10

▲無人島ゴミ拾いキャンプの参加者たち


うれしい~!
FC今治を運営する株式会社今治.夢スポーツです。noteでは「心の豊かさ」をテーマに、トップチームの活動のみならず、「しまなみ野外学校」などの教育事業や、地域全体で1つのサッカーピラミッドを創る試み「今治モデル」など、企業理念の実現に向けたの様々なチャレンジの舞台裏を発信します。