未来に触れるホームグロウン。コーチふたりの視点
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未来に触れるホームグロウン。コーチふたりの視点

今治モデルを土台として支える「ホームグロウン」活動。そこにはどんな想いがあるか、入社4年目の布山達朗コーチと、1年目の島田航海コーチに聞きました。役割や喜び、さらに今後についても話してもらいました。

サッカーに固執するより大切な草の根活動

――まずは、ホームグロウンの活動内容を教えてください。

布山:ホームグロウンは、地域向けのサッカー普及全般を担当しています。2019年までは普及チームという名で、「サッカースクール」と「巡回サッカー教室」がメイン業務でした。そこに、「サッカーイベントの開催」「サッカークリニック」「ゲーム環境の提供」「障がい者スポーツの支援」「児童養護施設の子どもたちへのサッカー教室」を加えた7つの活動をしています。
今治モデルの土台を担う活動なので、僕たちは「グラスルーツ(草の根)」とも呼んでいます。

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▲今治モデルの裾野を担う

――普及チーム時代からメインとなっている、サッカースクールと巡回サッカー教室について詳しく伺いたいです。

布山:サッカースクールは、年中児から小学6年生までを対象に、今治市内6会場で開催しています。サッカーと初めて出会う人も、スキルアップを目指したい人も、平等に楽しめる環境を提供しています。

巡回サッカー教室は、幼稚園、保育園や小学校を巡回訪問し、毎年2,000人以上の子どもたちに、サッカーの楽しさや身体を動かす喜びを伝えています。対象を年長児と小学1年生の2年連続で設定しているのは、体験をより印象付けるねらいです。
今年で6年目の活動で、今でこそ定着しコーチングスキルやメニューも確立してきましたが、最初は苦労しました。園によってグラウンドの広さが違いますし、先生の教育方針も違います。現場に入ってパッと感じとり、臨機応変にメニューを実践するには経験が必要でした。

実は今年から、西条市にも活動範囲を広げます。社長の矢野と校長会に出向いて熱意を伝え続け、ようやく許可をいただいたところです。「巡回ふれあい教室」という名目で、ボールを使うエクササイズを提供します。サッカーをという想いは当然ありますが、サッカーで囲い込むつもりはありません。ホームグロウンとしては、スポーツをする喜び、仲間と身体を動かす素晴らしさを伝えていくことのほうがもっと大事ですから。

指導者になりたかった愛媛出身のふたり

――そんなホームグロウンのコーチに、おふたりがなったきっかけを教えてください。

布山:僕は愛媛出身で、大阪体育大学に進学しました。卒業後そこで大学生のコーチをしているなかで、今度はもっと下の世代を見たいと思うようになって。最終的にはトップチームのコーチを目指していたので、ある程度完成した状態の大学生を見たあと、その完成像に子どもたちがどう近づいていくかが見えると、指導者としてまたひとつ成長できると思ったんです。そんなとき、ご縁あってFC今治に採用していただきました。
小学校の卒業文集を見ても、「ACミランの監督になりたい」と書いていました(笑)。最初から指導者を志望していたみたいです。

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▲布山コーチと子どもたち

――島田コーチはいかがですか?

島田:僕も愛媛出身で、大学で広島の福山大学に出ていました。元は教師を目指していたのですが、その道は断念。教育実習時に母校の済美高校サッカー部を指導していたつながりで、済美の選手権スタッフとして帯同していたときに、FC今治ユースの練習を見学したのが最初です。そこからご縁がつながり、今に至ります。

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▲島田コーチと子どもたち

――島田コーチは入社1年目と伺いました。実際にホームグロウンのコーチとして働いてみていかがでしょう?

島田:最初は戸惑いました。大学生や高校生への指導経験はありましたが、そこからいきなり幼児と小学生に変わったので。サッカー用語をかみ砕いて伝えなきゃいけないですし、ユーモアも必要。スクールで布山コーチのサポートをしながら、盗むように学ばせてもらっています。布山コーチの話は聞き飽きないんです。僕は一定トーンで話す癖があるみたいで。

布山:今もそうなってるよ。

島田:(苦笑)

――求められるのはサッカーの技術だけではないんですね?

布山:むしろそこではないですね 。ホームグロウンコーチに必要なのは、どう伝えるか。例えば、「ボールを落とさないようにキャッチしてみよう」と、「ボールを卵だと思って、卵は落としたら割れるから、落とさないようにキャッチしてみよう」では、子どもへの入り方が全然違うんです。子どもたちはすぐに飽きるので、声のトーンや抑揚も重要です。

子どもたちの笑顔のため、同じ目線で向き合う、承認する

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島田:巡回教室の場合、そもそもサッカーがやりたいわけじゃない子もいますし、スクールの場合でも、興味やレベルはバラバラ。そんな中、子どもたちは自己主張や承認欲求を発揮します。一人ひとりの想いに応えてあげたい一方で、規律を守ることも大事ですから、そのバランスを取りながら子どもたちを承認する難しさを感じています。

布山:「承認する」というのは、ほかのスクールと大きく違う指導指針だと思います。僕たちは悪いところではなく、良いところを探します。「これはできたね」が子どもにとってうれしいこと。必ず名前を呼んで、大きな声やジェスチャーで認めてあげることを、大切にしています。

――他に、子どもたちを指導する上で大切にしていることはありますか?

島田:同じ目線であることです。ハイタッチをするときも、膝を曲げて同じ目線になって手を合わせます。子どもたちと向き合う姿勢も意識しています。巡回教室であれば、30分前に会場入りして準備を整え、スタッフ全員で子どもたちを迎えます。スクールも早めに会場入りして、早く来た子とコミュニケーションをとっています。たわいもない話をするだけですけど、こうした関わり方が大事だと思っています。

布山:子どもは正直なので、分からない面白くない話は聞きません。なので、「このコーチの話は分かりやすい」「面白いことが起こる」と期待してもらう行動を心がけています。例えば、メニューを考えてマーカーを置くときから、こう来てこう動くから……と想像して、「赤色のマーカーに行って」と伝えられるようにセッティングする。常に子どもたちの動きと笑顔を想像していますね。

――コーチングスキルの向上や確立のために取り組んでいることはありますか?

布山:「振り返り」は必ずします。これはFC今治の全グループに言えることですが、「GOOD(よかった)」「BAD(ダメだった)」「NEXT(次にどうつなぐか)」があって。ホームグロウンは、どの活動でも帰りの車で振り返りをします。本当に伝えたいことを伝えるために、車内でフランクに、がポイントです。

あとは、我々のクラブには、独自の「岡田メソッド」があるので、それを基にしたグラスルーツ版のメソッドができたらなと考えています。初めてサッカーを教える指導者が、初めてボールに触る子どもを教えるときにも役立つはずです。

地域の指導者や親への働きかけが課題

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――子どもたちのサッカー人口は増えましたか?

布山:そこがまさに今の課題です。特に中学でサッカーから離れる子が多い状況です。市内の中学校ではメンバー不足のため連合チームで総体に出ているケースもあります。打開策になればと、サッカークリニックで小学生世代の少年団に行って僕たちのコーチングスタイルを共有し地域全体で子どもたちのサッカー人口を増やせるように取り組んでいます。今僕たちに必要なのは、子どもたちへの直接指導はもちろん、次の指導者世代への働きかけです。

保護者への働きかけも重視しています。現代は子どもの遊ぶ時間が減少していると言われますが、子どもの自立は遊びからだと考えています。そこで、親子サッカー教室の開催に力を入れています。他にも依頼があれば喜んで地域に出ます。限られたコーチ数でフル稼働ですけど、それがのちのち、サッカー人口の増加や「FC今治を応援したい」と家族でスタジアムに来てくれることにつながると信じています。

やりがいや喜びは、子どもたちの声や成長がくれる

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――どんなときにやりがいや喜びを感じますか?

島田:週1で会うスクール生が、先週やったことを覚えているとか、荷物を整頓して置けるようになるなど、子どもたちの成長すべてが喜びです。笑顔で「今日何するの?」と来てくれることも、「またね」と帰ってくれることも、それだけスクールを楽しみにしてくれていると思うとうれしいです。子どもたちにどれだけそういう思いをさせてあげられるかは、僕たちコーチ次第。責任は背負いながらも子どもたちの成長に親と同様に携わっているという実感が、やりがいです。

布山:現場には常に感動があります。昨日までまともにボールを蹴れなかった子が、ボールを蹴った瞬間に立ち合うとか、年長で入って泣いてばかりだった子が、ジュニアユースに入りたいと6年間サッカーを続けてくれるとか。
あと、僕はグラスルーツで「おひげコーチ」と名乗っているのですが、イベントで1回会っただけなのに街中で「おひげコーチ!」と声をかけてくれることも。そういうつながりこそ会長の岡田が言っている「目に見えない資本」なのかなと。それが体現できるグループとして、僕らが与えているのは無償の愛や感動だと実感できることも喜びです。

ホームグロウンの在り方が、未来に触れている

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――最後に、おふたりの今後の展望を聞かせてください。

島田:将来的には、アカデミーのチームを持ちたいという目標があります。だからこそ、1年目でホームグロウンの活動を経験できて本当に幸せです。このグループの幅広い活動量には驚きますが、その分学べることは多いですし、この夏イベントを企画させてもらうので、学びを生かして挑戦したいです。

僕は単年契約なので、こうしたチャンスをいつ失うかわかりません。その危機感を常に持ちながら、いろいろなカテゴリーの練習を見たり、FC今治にいる、さまざまなバックグラウンドを持ったコーチ陣とコミュニケーションをとったりして、自分の中でサッカーを整理していきたいです。

布山:大切にしていきたいことはふたつ。ひとつは、かつてヨーロッパサッカー連盟のテクニカルダイレクターを務めたアンディ氏が言った「指導者は選手の未来に触れている」という言葉。僕の声掛けひとつで、その子がサッカーを好きになるか嫌いになるか決まるかもしれない。メニューひとつで、サッカーを続けるか続けないか決まるかもしれない。それは常に心に留めておきたいです。

もうひとつは、ホームグロウンは、島田コーチのように新卒で入ることが多い場所。僕たち上司がどう立ち居振るまうかで、新人の未来も変わる。だからこそ、例えば、イベント企画の際、「無理だよ」ではなく「なるほどね。やってみたら」と言ってチャレンジさせてあげたい。うちの全社プロミスにも「失敗を恐れずチャレンジする気持ち、自分の力では変えられないものを謙虚に受け入れ、自分の力で変えられることを変える勇気を持ちます」という言葉があるんです。その真価を問われるのがホームグロウン。不完全でも汗水垂らして挑戦し続けるグループでありたいです。それが、企業の成長のためにも、次世代のためにも、大切なことだと思うから。

取材・文/高橋陽子

うれしい~!
FC今治を運営する株式会社今治.夢スポーツです。noteでは「心の豊かさ」をテーマに、トップチームの活動のみならず、「しまなみ野外学校」などの教育事業や、地域全体で1つのサッカーピラミッドを創る試み「今治モデル」など、企業理念の実現に向けたの様々なチャレンジの舞台裏を発信します。